落合拓人について

セラピストとの対談

精神性と現実社会の間で模索してきた二人

ーー今回対談していただくにあたって、お二人の関係について教えてください。

落合:山田さんの叔父さんが、日本で最初に瞑想家という肩書きを名乗っていた瞑想の先生で、日本の第一人者と言われていた方だったんです。僕は生徒として瞑想講座に参加していて、山田さんは瞑想講座の仕事を手伝っていて、そこで僕たちは出会ったんです。お互いにまだ学生の頃です。いま思えば二人とも葛藤をいっぱい抱えながら、社会の中で調和して生きる方法を模索していたんだと思います。そしていまは、自分たちの経験してきた精神性のようなものをリソースとして、学んできたものをもっと社会や世界とつながる形で提供しようとしている。僕はコーチングや関連する自己探求のワークなどで、山田さんはHRT(ハーモニック・レソリューション・セラピー)やマインドマシンというツールを使って。

山田:僕もいろいろな経験をしてきて、現在はHRT(ハーモニック・レソリューション・セラピー)というセッションを提供しているんですが、お互い提供するものは違っていても親和性を感じています。落合さんの考えているコーチングとHRTメソッドの特徴は、相互補完のような感じになっているんです。

落合:コーチングは人と人との直接的なコミュニケーションを通してクライアントをサポートしていくもので、HRTは最先端のコンピュータテクノロジーを使って、人の変化や成長をサポートしていくという大きな違いがあるんですが、HRTで説明している自己変容のための理論や内容が、僕のやっているコーチングや僕のコーチング観にもよく当てはまる。コーチングのプロセスで起こっている事と、HRTで説明されている変化のプロセスはとても似ているんです。従来のコーチングとは視点の異なるアプローチをしている山田さんと、このような対談をしてみると、僕のコーチング観が伝わるんじゃないかと思ったんです。

山田:HRTはクライアントとのコミュニケーションツールでもあるので、デジタルツールを媒介としてコーチングをしているとも言えるんです。

コーチングとハーモニック・レソリューション(調和的変容)

落合:ハーモニック・レソリューション(HRT)は、日本語にするとどんな意味になるんですか?

山田:新年の抱負のことを英語では、ニューイヤーズレソリューションと言うそうなんですが、ソリューションは解決、レソリューションで再解決なので、調和的な再解決法とか目標を調和的に実現するメソッドのような意味になります。

落合:僕の言葉にすると、人生を調和的に再構築していくメソッドという感じでしょうか。それなら僕のやっているコーチングもハーモニック・レソリューションと言っていいかもしれませんね。

山田:そうです。落合さんのやっているコーチングもハーモニック・レソリューションです。

落合:その人が、今よりさらに調和のとれた状態になっていって、本質的な意味で自然と共鳴しながら生きることができるようになっていくイメージですね。

山田:HRTは変化を強要するものではないんです。いろいろな自己実現、自己変容のメソッドがありますが、調和的に変容していくっていうのが重要なポイントなんです。HRTはものすごくマイルドに調和的に変わり始める。自然な形で自分の内部から変化が始まるんです。

落合:コーチやコーチング、何かのメソッドのパワーによって変わったのではなくて、自然な変化が起こったと思えることの良いところは、自分自身の力で変わることができたと思えることなんです。

山田:HRTではどれだけの時間で変化するかは言えないんです。その人のテーマが、その人にとってどれだけのハードルかは判断ができないからです。同じテーマでも、ある人にとっては簡単にクリアできるもの、ある人にとっては一生をかけてクリアするもの。その人がいつまでに変われるかは伝えることはできない。ただセッションをはじめたらそれまでの自分と比べてわずかであっても必ず少しずつ変化が起こっているということだけは言える。だから継続して欲しいんです。

落合:そうですね、本当にコーチングでも継続して欲しいんです。意識では変化を自覚してなくても、無意識レベルではわずかずつであっても必ず変化していますから。毎日少しずつでも前に進んでいるという自覚を持てることは安心の源かもしれない。そして、いつ実現されるか、いつになるかわからないっていうのは、ある意味親切というか誠実だと思います。自然の理(ことわり)です。自然ていうのは、木々の成長や、海や川の波をみても、つぎの瞬間にどのように変化・成長するかは予測できませんから。

リソースを有効に活用して本来の自分を生きる

山田:僕らは周りから観られている自分と、本来の自分というふたつの存在。周りからみられている存在は、対社会的に自分はこういう人間ですというセルフイメージでみてもらいたいために、自分を演じている。そこにエネルギーやリソースを使ってしまっていることで、本来の自分を生きるためのエネルギーがなくなってしまっているんです。HRTはこのふたつの存在のギャップを一つに統合する働きをしてくれるんです。

落合:コーチングやNLPでもリソース(資源)という言葉を使いますが、HRTで言うリソースとはどんな意味なんですか?

山田:ものごとを具現化するためには、ボディ・マインド・スピリットの3つのレベルにおいて、バランスのとれたエネルギーが必要になると言うんですが、このプロセスを方向づけてくれるための資源とエネルギーをリソース(源)と呼んでいます。

落合:コーチングもHRTもリソース。コーチ、セラピストもリソースになる。いろんなところにリソースはあるんだけど、なかなか気がつかない。そういう発想をもってないと活用できませんから。

山田:潜在能力を充分に発揮できていないのは、リソースを有効に活用できてないということなんです。いつも疲れていたり、燃え尽きたと感じている人の多くは、実際には充分なエネルギーを持っているんですが、エネルギーの配分が偏っていたり、必要のないことに向けられていることが多いんです。その場合はエネルギーを補給するより、すでに足りているリソースを再配分する方が簡単で、よりバランスのとれた状態にすることができます。

落合:「これまで効果的に使われていなかったリソースが、本来使われるべきところに効果的に使われるようになったときの変化をあなたは想像ができるだろうか?」とダン・エステスは問いかけているんですね。

※ダン・エステスはHRTの開発者

山田:それってコーチングにも通じる部分だと思うんです。HRTでは、それをサウンドの効果を活用してやっていると捉えてみると、コーチングとの共通項がみえてくると思います。

落合:コーチングを始めると、何かを実現したいとか手に入れたいと思っている主体である「自分自身が変わる必要性」っていうことに気づき始める。

山田:変わる必要性があるって気づいたけど、どこにエネルギーを振り向けていけばいいのかっていうのは、わからなかったりします。

落合:コーチングも本来はクライアントの潜在力を解き放つことが目的なんです。目標達成ということではなくて、クライアントの持っている本来のパワーと繋がるってことなんです。インナーパワーを開発していくというか。HRTでは、想像力の領域である、インナースペースへ戻っていくことで、潜在能力を解き放つことができると言ってますが、インナースペースに戻るというのも自分を制限しているプログラムから自由になったときに本来の自分に戻っていくということなんだと思います。

山田:僕も自分が持っているあらゆるリソースを組み合わせて、その人にとって役立つ必要なセッティングをします。落合さんの場合もコーチングという枠組みを利用すると思いますけど、型にはまらない自由な道を模索するのは大切ですね。

落合:どれだけ自分が自由でいられるか。コーチングだったら、どれだけ自分を守る鎧を外せるかということだと思います。自分が鎧を外さないとクライアントも外してくれませんから。その鎧を持ち続けることにエネルギーを使ってたらコーチングにエネルギーを使えない。みんな自分を守ることにエネルギーを使いすぎていますから。

山田:エネルギーの無駄遣いですね。

落合:そのエネルギーは本来必要なところに回せるわけです。良いコーチングセッションの後はコーチもクライアントも元気になる。自分を守るために使ってたエネルギーを創造的なことに使うことができたからエネルギーに満ちてくる。HRTで言うリソースの再配分です。

山田:自分を守ることから自由になった状態ってこういう感じなんだって理解するためには、コーチングもHRTセッションも大事だと思います。外すといいんだよっていうのは知ってるけど、「外れたらどういう感覚なんだろう」っていうのがわからない。何度も繰り返し体験していくと、だんだん理解できてくるし、自分で再現できるようになってくると思います。

苦しみや葛藤から解放されて本来の自分に戻る

落合:HRTでは、問題や苦しみは二重性・ギャップ・葛藤から生じているって言いますね。

山田:二重性というのは、「理想の自分と現実の自分のギャップ」とも言えるんですが、理想と現実が一致・調和している人は、理想を実現し、思い通りの人生を歩むことができるということになるんです。

落合:別の言い方では、意識と無意識が同じ方向を向いているとも言えるでしょうか?相反している願望が統合されているというか。

山田:多くの場合は、この二重性が「解消しているフリ」をして生きている。あるいは、自分の中の二重性を周りの人に気づかれないようにするために、自己防衛にエネルギーを消費しているんです。

落合:そういうことです。価値観や信じているものを守るため、自己防衛をしてそれを維持するために大きなエネルギーを使っている。あとは過去や未来にエネルギーを使ってる。過去への後悔や未来の怖れに意識を向け続けている。

山田:そして、調和の取れた心の状態に変化していくことで、理想と現実の間に繋がりができていって、願っていたことを現実レベルで「表現・行動・具現化」できる存在に変容していくことができる。この状態では、苦しみや葛藤などから解放されていて、二重性も統合されている。この状態がHRTで言う「本来の自分」ということになります。

落合:その「本来の自分」への変化を「調和的変容」と呼んでいるんですか?

山田:そうです。HRTでは、この理想的な状態に変化することを、「調和的変容」と呼んでいます。

テーマは「調和的変容」

落合:僕がコーチングで取り組んでいるテーマも調和的変容と言ってもいいかもしれません。変容の場合はいつそれが起こるかはわからない。具体的な目標実現が本当の目的ではなく、どのような存在になるかなんです。望んだことを実現できる存在(本来の自分)を体現することができるようになっていくこと。変化ではなく変容なんですよ。

山田:落合さんは瞑想の世界からコーチングに入ってきた人だから、日々の心と身体のチューニングとか調和っていうのを大切にしたコーチングを取り入れることで、従来の自己実現的なアプローチとは違う、だけどその人が本当に望んでいる場所まで連れて行ってくれるコーチングを目指しているのかなって思います。

落合:そうです。僕のコーチングの考え方では調和させていく。バランスをとって調和した状態にしていく。その人がその人の理想とするような存在になれるような状態を整えていく。自分の持っているリソースやエネルギーが充分に使えている状態というんでしょうか。

山田:そうですね。深いレベルで自己一致している状態という感じがします。

バランスや調和に信頼をおいたコーチング

落合:HRTではリソースの「予備タンク」にリソースの蓄えが充分にあると、変化が容易になって、進歩も速くなる。予備のリソースがあまりない場合には、変化はなかなか進まないって言うのが、なかなか面白い発想だと思うんですけど、予備タンクって現実レベルでいうとどんなイメージになるんでしょう?

山田:リソースは、ボディ・マインド・スピリットの三つの次元を循環している。だから、どこかのリソースが足りないときには、リソースが足りている別の次元からまわすことができるんです。だけど、リソースの総量が足りてなかったらそれはできない。そんなとき予備タンクに蓄えがあると、それを活用することができるんです。

落合:お金に置き換えてみると預金みたいなものと考えればいいですか?

山田:そうです。いつも使っているリソースは毎月の生活費に使っている普通預金で、予備タンクのリソースは定期預金みたいなものです。定期預金が充分にあると安定する。将来のための投資にも使えるし、いざというときの保険にもなります。

落合:コーチングではライフバランスを整えていくことを大切にしているんですけど、目標を追いかけるばかりでなく、健康や人間関係、お金や仕事の健全さ、身の回りの環境とか、人生の基盤になるところをバランスをとって確かなものにしている人は自然と良い変化につながっていると思うんです。そして、人生の困難な出来事に出会っても大きく崩れないように見えます。リカバリーがスムーズにいっている場合が多いように思います。

山田:人は誰でも「本来の自分」として存在できるんですが、さまざまな環境の中で生きていくうちに、いつの間にかバランスが崩れてしまうものなんです。

落合:僕が尊敬しているコーチの方は、エネルギー漏れを起こしている習慣、消耗している行動をなくしていって、逆に自分を満たしてくれる活動や行動を増やしていく、幸福度を上げてくれる習慣を作っていくという人生の土台となるところを徹底的にやっている。そうすることで自然と自分が望んでいることがみえてきて、自然と必要な行動が生まれてきて、自然と自分が理想としている人生の方向に近づいていく、というとってもシンプルな発想なんだけど、とても大事なところだと思うんです。

山田:日常生活の中でバランスをとり続けていくことは難しいけど、エネルギーが高まっていくような生活習慣や行動を増やしていくことだけでも、自然とその人が望んでいる人生の方向に変化は起こってくると思います。

落合:短期間で大きな成果を上げよう、短時間で今までとは違う自分に変わろうっていうプログラムがたくさんある時代に、僕たちの言っていることはとてもゆるいかもしれませんね(笑)

山田:ゆるいですね。きっと流行らないでしょう(笑)

落合:HRTの変化を強要しないっていうところは、急がないってことでもあると思うんですけど、継続して取り組み続けることは大事なところでしょうか?

山田:どんなメソッドでもそうですけど、それが自分にとってどれだけの価値があるのか、どれだけの喜びや可能性があるのか理解する前に終えてしまうことが多いと思うんです。本当の価値に気づいてもらえるところまで継続してもらえるかは大事なところだと思います。

落合:コーチングも本当の価値に気づいてもらえるところまで継続してもらえたらいいですね。コーチからの言葉や問いかけが深いレベルで届いていれば時間をおいてから、またベストなタイミングでコーチングが始まるというのはよくあることです。HRTを継続していった結果として、HRTなしでも変化していけるようになるということはあるんですか?

山田:そうありたいですね。依存してしまうプログラムを作らないように。使う人が主体なんですから、自分でバランス状態を覚えられればいいんです。それまでのサポートツールとして役立ってくれたら嬉しいことです。

落合:そうですね。コーチングもそうなんです。コーチングセッションの中でセンスを磨いていくんです。自分自身の本来の力と繋がっていくことを、主体性を持って。それを覚えていられれば、さまざまな場面で自分の持っている力が活かせるようになるんです。

コーチングは効果的な瞑想

落合:そういえばコーチングという言葉も広まってきたんですけど、僕らのバックグラウンドである瞑想も、最近ではマインドフルネスが認知されるようになってきましたね。

山田:マインドフルネスが知られるようになってから瞑想に興味をもつ人が増えてきたと思うんですけど、大企業やビジネス分野に取り入れられているのは、潜在能力の開発や意識の変革に有効だからですね。

落合:コーチングでコーチとクライアントが共に深い意識状態になっているときは、瞑想の状態とよく似ていたりします。リラックスしていて高い集中状態になっているとき、ふだんは気づけないことにも気づける状態。直観が冴えて、創造的になっている状態。コーチングは、優れたコーチが効果的に行うことができたら最も効果的に瞑想状態に誘導してくれるもののひとつだと思います。瞑想の本来の深遠な目的とは違うかもしれませんけど。集中状態になるための環境をコーチが整えてくれるんだから。毎日、瞑想のトレーニングをしていても一人で深い集中状態になるのは簡単ではないですから。

山田:僕も落合さんからコーチングを受けたことがあるからわかりますけど、コーチングは内側に集中することの助けになってくれて、瞑想状態になるためのサポートになってくれる。コーチングはガイド付きの効果的な瞑想だと思います。人は自分を制限しているロック解除の鍵を外に探すじゃないですか。それが自分の内面にあるのを思い出させてくれるのがコーチングでありHRTであり瞑想なんだと思います。

落合:それもひとつの選択なんだと思います。

山田:HRTでは、選択・行動することで、変容プロセスのスイッチを入れるって言います。意識的な選択と行動があるところに変容が起こる。あと決意です。

落合:ほんとコーチングと一緒です。興味関心を持ったところから始まっているんです。スイッチを入れるとその人の内的な力が発動して、その人自身の力で変わっていく。動き始める。きっと僕たちのこの対談を読んでいることも選択であり行動だと思います。

山田:そうです。「本来の自分」になりたいと「選択」して、いろいろな情報を集めたり読んだり、自分を見つめる時間を持ったりする。そして、セッションやコーチングを受けるという「行動」を起こしていく。調和的変容は、セッションやコーチングを受ける前からすでに始まっているプロセスなんです。

成長と具現化のサイクルは螺旋状に進む

落合:自分自身の選択と決断から目標に向かって行動を起こしてく力をつけていくことは、すごく大事だと思います。それだけではなく、自分を超えたところの力を信頼するとか、大きな流れを信頼していくとか、それもできるともっと楽なんですよね。コーチングでは、自分で決めた事をやることで変化と行動を作り出していく。だけどいつも直線的に変化していくわけではなくて、停滞している時期があったり、あるとき大きく飛躍する時期があったり、変化には波があって螺旋状だったりする。人生には思わぬ出来事や、望まないことも起こってきたりするわけだけど、自分の中で調和やバランスが取れていると、何が起こってきてもそれを新鮮な感じで楽しめる。それが一番自由だしエネルギーを感じる。だからそういう感覚を磨いていけるコーチングをやりたいと思うんです。

山田:多くの人にとっては、結果が出るのが早いか遅いかが判断基準になっているから大変です。だけどよくみてみると、変わっていないようにみえて本当は変わっていたりします。

落合:最初に思い描いていた理想のイメージがそのままの形で具現化されたわけではないんだけど、本質的には自分が望んでいたことが想像していたイメージとは別の形で具現化されていたりする。それで、ひとつのサイクルが完了する。そしてまた新しいサイクルが始まるんだけど、クライアントはサイクルが完了したってことがわからなかったりする。自分が望んでいると思っていた事とは違うことが具現化しているから、まだ自分は願った所にたどり着いていないと感じていたりする。そこに気づいてもらって、つぎの新しいサイクルに進んでいくことはすごく大事だと思います。

調和的変容にはサポーターの存在が必要

山田:変容には選択と行動が必要ですという話をしたんですけど、それに加えて調和的変容をもたらすには、その人の人生に深く関わってサポートしてくれるサポーターのような存在が必要なんです。

落合:それはコーチの役目でもありますね。セラピストやカウンセラーであるかもしれないし、メンターのような存在との出会いであるかもしれませんけど。

山田:要は自分の変化を確認したり、フィードバックしてくれる人が必要なんです。自分ひとりでは自分のことを確認できませんから。第三の眼が必要なんだと思います。

落合:そうですね。自分を客観的に見れる人はなかなかいないから、適切な自己評価を持つことは難しいです。そして、適切な自己評価を持てることは成長を促してくれる。

山田:それから変化のプロセスは人によって違うから、いろいろな変化のパターンが考えられるんです。ある人にとっては混沌とした状態から秩序化していったり、別の人にとっては秩序だった状態から混沌化していったりします。

混沌状態は大きく飛躍するための創造的な時間

落合:HRTでは秩序と混沌ということを言いますね。

山田:混沌状態の人は、秩序状態に移行する変化が現れる。これは、漠然としていたものが整理されてきて、ビジョンが形となって見えてくるプロセスです。一方で、秩序が取れている状態の人の場合は、一旦バランスが崩れたような混沌状態になることもあります。これは、より高いレベルでの秩序を再構築するためのプロセスというわけです。

落合:コーチングをしていても、秩序化のパターンと混沌化のパターンがあると思います。

山田:多くの人にとっては、秩序=良い、混沌=悪いというイメージができていると思うんです。実際、混沌状態になったときには予想もしていなかったような大きな出来事が起こってきたように感じたりしますから。そんなときに何が起こっているのかを説明してくれて、サポートしてくれるコーチのような人が必要だと思うんです。

落合:コーチングをしていても、クライアントの混沌化のプロセスとして、人生の転機となるような大きな出来事だったり、思いもよらない出来事が起こってきたりしますが、ほとんどの場合はその変化を落ち着いて肯定的に受け止めることができているように思います。それはコーチングとコーチという存在がいてくれることが、人生の大きなイベントをうまく乗り越えていくためのサポートとして役立っているんだと思っています。

山田:進化するためには一回秩序を手放して混沌に触れないと、さらに先には進めないんです。人は安定を求めますが、安定というのはある意味秩序なんです。安定がある所まで行くと必ず臨界点がやって来て、行き詰まりや壁になります。そうすると新しい秩序を再構築するという段階に入るんです。古い秩序が壊れるとカオス(混沌)が生じる。混沌状態では揺らぎが起こっていて、不安定になっている。その時そこでスイッチが入るんです。そこでは古い秩序を壊しているので、新たなチャレンジが必要になりますが、新しいリソースを集めて、新しい秩序を再構築していくことになるんです。

落合:混沌状態っていうのが一番創造的な時間なんですよ。何が生まれるか分からないし、何でも生まれる可能性がある。僕たちは、潜在力を開花させていくために、この秩序と混沌という二つの状態の間を相互に進行しながら、より新しい秩序を再構築するというプロセスを続けているんだと思います。調和のとれた状態っていうのは、この秩序と混沌という二つの状態の間を、柔軟に理想的なバランスで相互進行している状態だと思うんです。

山田:こういう人の心に関わる世界に長くいてたくさんの人の変化を見ていると、二つの極と極との間を振り子のように行ったり来たりを繰り返しながら、だんだんバランスを取っていくように見えます。そこに調和のポイントが生じると思うんです。最終的には調和点や中庸点に向かって旅をしているように感じます。自分の世界観とか視野がどんどん広がって調和点が変わってくる。それが自分にとっての心地よい変化ではないでしょうか。そこがハーモニックレソリューションでいう中庸のポイントなんです。

落合:中庸のポイントですね。ポジティブでもネガティブでもなくニュートラルという感じがします。そこでは、強い目標や願望だったものが純粋な意図に変わっていると思います。ポジティブでもネガティブでもなくニュートラルが最もパワフルなんですよ。自分が望んでいるところへ「ただそこへ向かっていくだけ」という自然な方向性の感覚ですね。

自己実現のための地図と見守りガイド

山田:僕が提供しているHRTっていうのは、ある意味「地図」なんです。「こういう感じの地図になっていますけど、あなたはこの道で進みますか?」という地図を提供しているように感じています。

落合:地図を持っているのは人生を歩いていく上で心強いことです。イベントも自分の意図を越えて予期せぬ感じで起こってくる。人は目の前で起こった出来事にすぐに意味づけをして、良い悪いの判断をするんだけど、人生を長期的にみてみれば本当に良いのか悪いのかわからない。視点が近すぎて起こった出来事の全体像が見えないんです。だけど、そういう時にコーチがいてくれたらいいかなって思うんです。HRTが地図だとしたら、コーチはある意味ガイドですね。

山田:行動や内容ではなくて、その人の存在そのものにOKを出してくれるコーチでありスポンサー(後見人)のような人がいてくれたらいいと思います。昔はおじいちゃん、おばあちゃんのような存在だったかもしれませんけど。

落合:スポンサーですね。存在のすべてを認めてくれる人。ありのままを認めてくれる人。人は誰かひとりでも自分を愛してくれている人がいるとわかっていたら、それだけで頑張れるものだと思うんですけど、それがパートナーとか家族だけである必要はないと思います。ある人との出会いで人生が劇的に変わることがありますけど、コーチもそんな存在となれたら嬉しいことです。