落合拓人について

落合拓人とは

落合拓人インタビュー

プロセス指向のコーチング

赤木:落合さんは、現在どんなことを中心に活動をされているんでしょうか?

落合:パーソナルコーチングが活動の中心です。コーチングといっても一般的な意味でのコーチングというより、もっとカウンセリング的だったりセラピー的だったりということも含めて、より広い意味でのコーチング、広い意味での対人支援です。あるときはカウンセリングと言った方がいいかもしれないし、あるときはコーチングと言った方がいいかもしれないですけど、僕の中ではそこには境目がないんです。

赤木:落合さんは、コーチングのベースとなっているのはCTIでしたよね。

(※)CTIジャパン。国際コーチ連盟に認定されたプログラムACTPを提供しているコーチ養成機関。

落合:そうですね。CTIで学んだ部分が大きいですね。CTI以前にも他のコーチングスクールで学びましたしNLPコーチングなども学んだんですが、より自由であるとか、より柔軟にその場から創造していくというCTIのスタイルは自分の持っているプロセス指向の背景にピッタリだったんですね。今ではそこからも自由なコーチングになっていますけれど。

(※)落合拓人のコーチ資格
ICF国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
米国CTI認定CPCC(Certified Professional Co-active Coach)

本当の変化は、幸せに生きるための変化

赤木:コーチングに対する世の中の一般的な捉え方では、行動を促す方法であるとか、目標達成のための方法であるとか、そういうイメージを持たれていることが多いかと思いますが、それに対して、落合さんがやっているコーチングというのは、要はそれだけではないんでしょうか?

落合:もちろん目標やゴールを設定することをしていきますよ。行動を起こしていくことも大事にしています。そして、大切にしていることはコーチングのプロセスで、これまでに身につけてきた自分を縛っている、さまざまな価値観や信念から自由になっていくこと。複雑になるのではなくて、より解放されてシンプルになっていく方向にシフトしていくことです。幸せに生きる、豊かに生きるための人生の土台となる生き方を探求していくことと、それを構築していくことです。本当の変化とは、幸せに生きるための変化であって、本来の自分にもどっていくことだと思います。コーチングを求めてやってくるときは、生き方を見直すときがやってきているときかもしれません。

赤木:そうですね。私も全く同じように考えています。

満たされているところから始めるコーチング

落合:僕のコーチングを受けたら何があるか?と言ったら、きっと「幸せになりたい」「成功したい」という理由で、さまざまなセミナーやワークショップに行くけれど、結局、問題の繰り返しが終わらない。僕のコーチングを受けたら、その秘密がわかるかもしれない。

赤木:そもそもセミナーを受ける必要がなくなると思います。外側に解決を求めに行っていた原因、根本的な部分がわかると、もう外側に青い鳥を探しに行かなくて済むようになる。

落合:外に何かを求めていた時っていうのは、欠乏感からのスタートですよね。

赤木:欠乏感から動いている時と、満たされていることを自覚している時の行動は一緒かもしれないけれど、行動の質が違ってくるから結果的には人生が変わっていく、あるいは人生の質が大きく変わっていくと思います。

落合:コーチングを受けてすぐに「満たされている」とか「本当は幸せなんだ」という所にずっといられるわけではないですけど、コーチングを受ける度にそこに戻って来れる、もう一回思い出せる。満たされているところから始まる行動には焦りがないし、葛藤がない。そういう時こそ、頑張って何かを手に入れたいと願わなくても、自分の必要なものが自然と循環するような状態だったりしますよね。

赤木:そこに焦点を当てていったときに、クライアントにはどのような変化が起きてくるんでしょう?

落合:それまでよりも広い視野で物事が捉えられたり、気づいていなかった選択肢がみえてくると思います。こだわりが少なくなって、もっと心の余裕をもって生きられるようになるとか。生きるのが楽になった、軽やかになったと感じられる瞬間が増えていくんじゃないかな。自由を感じられる時間が増えていく。ことさら頑張らなくても自然な変化が起こってくると思いますよ。意識的な選択が可能になってくることで、自分の進むべき道が自然にわかるようになるとかね。

本来の自分にもどっていく、生き方の再構築

赤木:一般的には目標達成とか行動を促すとかあるわけですけど、そのさらに先にあるものは何か?何のために目標を達成するのか?何のために行動を促すのか?その先にある本当にその人が望んでいる状態にダイレクトに働きかけていくというように聴いていて思いました。

落合:これを達成したら幸福になれるとか、これを手に入れたら幸福になれるとか、幸福と自分との間にいろいろな条件を挟み込んでいると思うんですけど、人間は本来は生まれながらに豊かな存在なんだと。多くの場合、自分は足りていない、充分ではないという欠乏感や未来への恐れが動機になって目標を掲げていたりすると思うんですけど、達成した瞬間、獲得した瞬間は一時的な満足感を得ることはできるけど、また繰り返しの旅が始まります。コーチングは「いまの自分ではない別の何かになろうとする」のではなくて、本来の自分に戻る、本来の自分を生きる、生き方の再構築なんだと思うんです。

赤木:ということは、どんなクライアントがコーチングを受けると、落合さんがお役に立てるんでしょうか?特に「こういう人にはお役に立てる」というのはありますか?

落合:そうですね。「すべての人」っていうのが答えでもあるんですけど。年齢や職業は関係ないと思うんですが、仕事や家庭で一生懸命やってきて、そろそろ自分の自由というか、自分の内面を深めていく段階に差し掛かっている人であるとか、あるいは経営者だったりビジネスマンで仕事を一生懸命やってきて、本来の自分を生きることが、本当の社会貢献につながる生き方であると気づき始めているような人でしょうか。ですが、充実した人生を生きたいと望んでいる人であればどんな方にでもお役に立てると思います。

自己探求からコーチングへ、コーチングの探求から「探求のコーチング」へ

赤木:一般的にいうコーチングより、より本質的なところをみて関わっていくというセッションをされているんだと思うんですけど、そういうセッションをされるようになったのはどんなキッカケ、背景、バックグラウンドがあってということなんでしょうか?

落合:もともと自己探求的なことをやってきていたので・・・

赤木:いつくらいからですか?

落合:10代の頃からですね。精神性の探求のようなところに関わっていて、東洋的な瞑想だとか、トランスパーソナルと呼ばれるような潮流に触れていた。特にトランスパーソナル心理学やプロセスワーク(プロセス指向心理学)というものに大きな影響を受けていたので、そこらへんの影響が大きいと思うんです。その辺の背景があって、コーチングはコーチングとして従来のコーチングを学んで実践していた。最初のうちはコーチングと自分がこれまでやってきていたことは別なものとして捉えていたんだけど、途中からだんだん別物ではないと思うようになってきた。コーチングを続けていくうちに、人生において本当に望んでいることを見つけ、追求していくには、表面的な欲求だけではなくて、従来のコーチングで学んだ方法以上に深いところで自分自身の心をみつめていく作業が必要になってくると。それからコーチングのスキルや、考え方も大事にしつつ、これまで自分が学んできたものも大切にしつつ、自分が一番コーチとして力を発揮できるやり方、自分が一番クライアントに貢献できるやり方というのを追求していった。

落合拓人のコーチングは「ガイド付きの瞑想」

赤木:落合さんとセッションしていくと、何か世界にもっと奥行きが広がっていくような旅がスタートするのかなと思います。もしコーチという肩書きを使わなかったとしたら、どう表現すると落合さんが本来していることに近いですか?

落合:コーチングと言わなければ、セッションは「ガイド付きの瞑想」です。僕は「人生の探求のガイド」ですね。コーチングは「内面の探求」です。それは、「出る価値のある旅・取り組む価値のある旅」ですね。答えは示せないですけど。

赤木:答えはその人の中にある答えであって、落合さん自身は何十年と内面を探求してきた経験があるわけです。そういう意味では、自分を深く探っていくと、人類の普遍的な課題につながると言うよくある話になりますけれども、だからこそガイドもできるんだろうなと思います。

落合:それは共通しているからね。自分の内面にあるものも、クライアントの中にあるものも、全て一つの中にあるもの。

起こってくる様々な出来事を、意味のあるものにしていく

赤木:落合さん独自のコーチングというか、落合さんが持っている力を発揮したコーチングがどういうものなんだろうと思います。他のコーチとは、どういうところが違うのかなと思うんです。使っているスキルとかはそんなに違わないと思うんですけど、観ているところが違うのかなと思います。

落合:僕は若い頃からトランスパーソナル的な世界に触れていたので、人生の中で起こってくる望ましくない出来事、悩みや問題といった否定的にみえる出来事や状況であっても、何か大切なことを気づかせてくれるメッセージが含まれている肯定的な変化の可能性としてみてみるというのがあったんです。悩みや苦しみ、困難といったことにも、何か大切な意味がありそれとしっかり関わることで人生が豊かになっていく。そういうところに立ってみると、問題は人生を豊かにしていってくれるリソースになってくれる。

赤木:これは重要ですね。人生の苦しい時期とか闇とか言われる部分こそ人生を豊かにしていくリソースであり、贈り物なんだと、それは世の中の常識からは真逆ですよね。一般的には解決すべき悪しきものみたいなイメージがあるじゃないですか、そうじゃないんだよと。

落合:それを気づきとか成長の出来事としてガイドしてあげられる存在と言うのかな。

赤木:私も個人的には、それがコーチの役割なのかなと思いますが、落合さんとしてはコーチが本来果たす役割ってどんなものだと思います?

落合:日常で起こってくるさまざまな出来事をどう活かしていくか。何が起こっても、それはその人にとって意味のある出来事なわけで、その起こってきた事をどう成長につなげていくか、人生を充実させていくことにつなげられるか。コーチングの中での目標達成のプロセスでも、起こってくる問題や困難、障害は早くクリアして、なるべく早くゴールに近づいていく、達成するというのがあるけれど、それを解決するというよりは、それを上手に使って人生を豊かにしていく。

赤木:一般的な常識ではいかに早く達成するか、いかに早く成功するかしか見えてないかもしれないけど、ある意味ゴールを目指すというプロセスにおいていろんな問題がみえてくるわけですよね。ある面それを炙り出す、それを発見して人生を豊かにしていくために目標を立てるということでもありますね。

人生の神話、人生の物語を発見して育てていく

落合:最近、ブランディングということがよく言われてますけど、ある意味、僕のコーチングもブランディングの作業かなと思うんです。僕の言うブランディングっていうのはその人の中にある、人生の物語とか神話みたいなものってあるじゃないですか?その人の中にある人生の神話、人生の物語を発見して、それを育てていくのはある意味でブランディングではないかと思うんです。

赤木:深い意味でのブランディングですね。その人自身がブランドになるという感じなんでしょうか。その人しか持っていない物語を紡ぎだす。そして、それを生きられるようになる。その人しか持っていない物語を生きられるようになると、その人自身はどうなっていくんでしょう?自分の物語を生きられるようになると。

落合:人生の被害者から創造者の立場へ変わっていくんじゃないですか?自己実現している人は自分の未来を良く知っているといいますけど、自分の内面にあるビジョンを実現していってるんだから当然ですよね。自分の物語を生き始めたら自分の人生がよくわかる。コーチングではよく「ミッション」とか「使命」というものに気づくことが重要と言われますけど、自分が何のために生まれてきて、何をしていくのか?自分のミッションとか使命とか魂の目的のようなものがよくわかるかもしれない。人生に起こってくる出来事の意味も。人生が不可解なものではなくなっていくかもしれない。

コーチングのプロセスを通して、人間的に成長していく

赤木:最初に立てた目標は、プロセスを進めるためのきっかけで入り口にすぎない。そのプロセスで得た素材を活かして、人生を豊かにしていくということですね。

落合:目標はそれを実現する過程で自分がどんな人間になっていくか、どう成長していくかのためにあると。目標達成やコーチングのプロセスを通して、人間的に成長をしていくということだと思います。

赤木:まさにそう思います。私もコーチとして、たくさんのクライアントの成長した姿をみていてそう実感しています。

落合:1対1のコーチングセッションでは、ものすごく深い話ができるじゃないですか。セミナーやワークショップではない深さで。1対1の関係って逃げが打てないというか真剣勝負でごまかせない。その人の人生を聴かせてもらって、自分の経験していない世界を一緒に生きられる時間ですよね。

真実を語っている瞬間は、人生が満たされている瞬間

赤木:1対1でそういう深い話を聴かせてもらって、そして落合さんが聴いていくことでクライアントにはどんなことが還元されるんでしょう?

落合:ミヒャエル・エンデの「モモ」の中でモモに話を聴いてもらうことで「自分のどこにそんなものが潜んでいたかと驚くような考えが、すうっと浮かびあがってくる」そして、「大人になると忘れてしまうこと」が引き出されてくるというのがありましたけど、他者がいてくれることで他者との関係性の中でこそ、自分の人生において大切なものは何か?を「思い出す」ことができる。自分にとっての真実を語っている瞬間そのものが「人生が満たされている瞬間」じゃないかと思うんです。

赤木:本当の姿に戻っていくというか・・・人によっては怖れを感じることもあるかもしれませんが。

落合:コーチングはクライアントのプロセスを大切にしていくオーダーメイドのセッションだから、クライアントのペースで進んでいけるのがいいところです。コーチのペースではなくてね。

赤木:それを聞くとクライアントも安心しますね。

気づきを日常に活かすために

落合:セミナーやワークショップで何かに気づいた、何かが変わったといっても元に戻ってしまうことも多いですけど、気づきは日常に活かさなければ意味がない。コーチングはそれを日常に根付かせていくために役立ってくれる。時間をかけてそこに一緒に取り組んでいく。そこに僕もやりがいを感じています。

赤木:気づいたことを日常生活に根付かせていく。しかもクライアント自身のペースを尊重して。本当にオーダーメイドの関わりがコーチングセッションになるんですね。

落合:個人のコーチングセッションでは自分がこれまでに学んできたこと、人生で経験してきたことをフル活用してできる。自分の持っているリソースをフルに使ってクライアントに必要ものを提供していく。だから「落合拓人のセッション」なんですよね。

赤木:落合さんがこれまでに学んできたこと、人生経験としてのリソースはたくさんあると思うんですけど。主なところではどんなことがリソースとなっているんでしょうか?

落合:コーチングセッションの進め方、スタイルというところで言えばプロセスワークから受けている影響は大きいですよ。コーチングの中で活用するかどうかは別として、幅広くいろいろなものに触れてきたので、自分自身がいま提供できなくても、いまのあなただったらこういうことを勉強してみた方がいいとか、こういう人のところにいってサポートを受けたらいいとか、紹介したりすることができる。

赤木:自分が体験してきているから、必要としている人には紹介することもできる。

落合:自分だけで何とかしようとはしていないんですよ。クライアントに必要なものをコーチングだけで提供できるとか、自分だけで提供できるとか思ってはいないので。

赤木:幅広いバックボーンを目の前のクライアントに投入する。クライアントに何が必要なのかを見極めながら。直接コーチとして関わっていくという部分もあるけれど、すべて自分ひとりで完成させようということではなくて、適切なものや適切な人を紹介するという関わりもしているんですね。

落合:コーチング自体がそうですよね。自分でセミナーやワークショップに参加して、いろんなものを勉強しようとすると時間もお金も、ものすごく必要になるけれど、幅広い経験をもっているコーチはクライアントの必要としているものを提供してくれる。

心の平和から生きる

赤木:落合さんは数年間、お母様の介護をされていましたよね?その時期の落合さんの在り方や姿勢がとても印象に残っています。大変なことも多かったと聞いていますが、そんな中でも落合さんは、いつも心が平和で安定している。笑顔が絶えないという感じでしたよね?

落合:コーチングを仕事にしていたおかげで母の傍にいることができたのは幸運でした。ですが、肉体的、時間的には凄くハードでしたよ。とにかく自分を良い状態に保っておこうと思って、毎朝、介護をはじめる前に早起きして瞑想の時間を確保していました。あとバイロン・ケイティのワークですね。毎日、隙間時間をみつけてはワークしていました。肉体的には大変でしたけど、精神的にはとても満たされていましたね。そこにある肯定的な意味を捉えてみると、幸福がいっぱいあるんですよ。感謝できることが。

赤木:本当に世間一般の見方で言えば「大変ですね」の一言を当てはめてしまいそうな時期だったと思いますけど、そんな中でも喜びをみいだすことができたんですね。

落合:幸福を感じたり、感謝を感じたりしているときは、肉体的な疲労や大変さはそれほどではないんですよ。

赤木:精神が満たされているというか、いま出てきた言葉は「気高さ」ですね。感謝しようという努力ではなく、自然と感謝が湧いてくるという。

落合:神聖な時間だったと思いますよ。

赤木:これからますます介護に関わる人たちは増えてくると思いますけど、落合さんは大変だというイメージに振りまわされるのではなく、そこに本当の介護の姿をみることができたんだと思います。ここにもコーチとしての役目がありそうですね。コーチングをやっていても、そういった困難な時期にいるクライアントともたくさん出会いますから。心の平和や心の平安を大切にしているのは、落合さんの生き方であり生きる姿勢ですよね。

人生の困難と向き合う

落合:人生の中でも生老病死にまつわる時期はいちばん愛が必要なときですものね。介護や看取りをする側の立場でも、いちばん愛を体験できるとき、いちばん愛を学べるときですよね。

赤木:落合さんの姿勢は、現実に抗うわけではなく、現実をクリアにみていくことだった、それはコーチの在り方そのものだったと思うんです。落合さんはそんな困難なときでもコーチとして存在していたんですね。

落合:このテーマはまだ現在進行形なんですよ。このあたりにコーチとして自分が貢献できるテーマがあると感じているんです。未だ探求中のテーマなんです。

赤木:困難や障害をどう捉えるのか。それを大きなリソースとして人生を豊かにするというのは、落合さん自身の人生の中でそれを実践してきたからできることなんですね。単なる理論や知識で知ってることを教えるということではなく、まさに自分の人生を通して体験してきたから伝わるんだろうなと思いました。

可能性に目を向けて、自己イメージの枠を超える

赤木:最後になってしまいましたが、どうしてコーチングをはじめたんでしょうか?どうしてコーチングという形がいいと思ったんですか?

落合:自分自身が精神的に苦しい状況に陥っていて何もできない時期が何年間かあったんですけど、そのときに周囲から、病気として扱われたり、否定的な見方をされるということがあって、更に苦しくなっていったことがありました。そのときに、コーチングにも関わっているセラピストの方なんですけど、人生の可能性にフォーカスを当てている方で、「それは、病気や問題ではなく、成長のプロセスなんですよ」と言ってもらって、人生で実現していきたいことや未来の可能性に意識を向けなおしてもらった。それから急に現実が変化していったということがありました。そのときに自分がやっていきたい方向はこっちなんだって思ったんですよね。可能性をみていくという。もうひとつは、コーチングを学んでいく中で、コーチングが一番自由度が高くていかようにでも使えると感じたんです。コーチングの流派とか「コーチングはこうあるべき」という枠に縛られなければ、自分がこれまで経験してきたこと、学んできたことをコーチングという道具箱の中に入れて、いろんなことが可能なんだなって思ったんです。そして、自分の考える「コーチ」という存在が、「自分はどんな人間なのか?」という問いに対する自分の感じ方に一番ぴったりくるんですよ。

赤木:なるほど納得です。

落合:コーチングは自分自身に必要だと感じてるからやってるんですよ。自分のためにしていることは、クライアントのためであり、クライアントのためにしていることは自分のためであり、そこには差がない。どちらかという話ではなくて、円環であり循環。そうやって関わっていってクライアントが変化すると、それがまた自分に還ってきて、それがまた循環していく。

赤木:感謝の循環ですね。ありがたいことです。

ー インタビュー後記 ー

赤木広紀が落合拓人を応援するところ

なぜ僕が落合さんのことを応援しているかと言うと、落合さんが持っている特徴とか能力とか資質という面で言うなら、落合さんは、英語で言うとLiberateする人、Liberator(解放者)なんです。解放するとか、自由にするという意味です。まさにその人の持っている思い込みとか囚われを解放する人であると思うんです。

もちろん本当は、その人が自分で自分を解放するわけなんですけど、「ダメだ、ここからはどうやっても抜けられない」と思い込んでいて、思い込んでいることにさえ気づいていない人に対して、落合さんがコーチとして関わることで「本当は自由になれるんだよ」ということを思い出してもらえるような関わりをする。そして、こうやって自由になっていくことができるんだということを思い出してもらう。

落合さんは、その人が自分でつけた鎖や鎧を取り外していくっていうことをしている人だと思うんです。それは、コーチとして僕自身もとても大切なことだと思っているところです。気づいている人は少ないと思うんですが、経営者のコーチングにも最も大切なところなんです。そして、それをやっているコーチ、それができるコーチというのはほとんどいないんです。一般的には鎖や鎧を覆い被せてしまう方向のことが多いわけで、その反対をやる人は貴重な存在なんです。

落合さんは、その貴重な存在なので、応援しているということなんです。映画の「マトリックス」に喩えると、落合さんはモーフィアスです。夢の中にいるネオを目覚めさせる人です。救世主を見つけ出す人ですね。その人自身の中にいる「内なる救世主」あるいは「内なる英雄」を見つけ出す人なんです。